ストリングの長さ

適正ブレースハイトとストリングの長さ

 リカーブボウでは、ドローレングスあるいは使用する矢の長さに合わせ、弓本体の長さ(ボウレングス)を選択することになります。ワンピースボウの時代には、ドローレングスに比例する身長を目安に64インチ、66インチ、68インチの3種類のボウレングスから選択するのが一般的でしたが、ハンドルとリムが分離する構造のテイクダウンボウの時代になってから、さらに短い組み合わせや、さらに長い組み合わせも可能になっています。ハンドルライザーの長さは、製品にもよりますが21インチ、23インチ、25インチ、27インチの4種の規格があり、リムでもエクストラショート、ショート、ミディアム、ロングの4種の長さの規格があります。これらを組み合わせることにより、62、64、66、68、70インチのボウレングスのバリエーションを構成することになります。

 2002年のHoyt社のマニュアルでは、ドローレングスが27インチ以下では64インチ、24~29インチは66インチ、27~31インチは68インチ、29インチ以上は70インチを推奨し、若干の重複を含んで大まかにドローレングスに比例したボウレングスを指定しています。

 ストリングの長さもこの5種類の規格があれば事足りるとも思えますが、困ったことに、このサイズ表記はリカーブの湾曲に沿った長さとなるため、リムとハンドルが異なるメーカーの組み合わせでは、リカーブデザインの違いやリムチップ設計の違いにより、標準的なブレースハイトに設定するためには、適正なストリングの長さが微妙に異なってきます。組み合わせによっては、最適なブレースハイトに設定するのに、微妙に長さの違うストリングが必要になるというわけです。とくに、リカーブ部分の湾曲の大きい設計になっているBorderなどのヨーロッパ系のリムでは、長いストリングが必要になります。さらに、Hoyt社の製品においても、年代により指定するストリングの長さが異なってきています。 2002年当時においても、特別なセッティングを要求したFXリムだけが通常リムよりも約1cm長いストリングが指定されていましたが、その後2012年に市販されたFormulaシリーズでは、従来のモデルよりも長いストリングが指定され、2013年からHDSシステムのGrand Prixリムも含めて、すべてFormulaシリーズと同じ長さに統一されています。とくにFormulaシリーズのHPX系のハンドルライザーは、デザインがリフレックス気味に変更されてピボット位置が浅くなり、指定ブレースハイトも低くなっているので、従来サイズのストリングを使用して一般的な高さのブレースハイトのままで使用するのは間違いであることに注意してください。


  Hoyt 指定ストリング長と推奨ブレースハイト

 年 60インチ  62インチ  64インチ 66インチ 68インチ 70インチ 72インチ

 2002~2008

 ―  155cm  160cm  165cm  170cm  ―

BraceHeight

( 8-8.3/4) ( 8.1/4-9) ( 8.1/2-9.1/4) ( 8.3/4-9.1/2)

2009

150cm 155cm 160cm 165cm 170cm 175cm

BraceHeight

( 8-8.1/2) ( 8-8.3/4) ( 8.1/4-9) ( 8.1/2-9.1/4) ( 8.3/4-9.1/2) ( 8.3/4-9.1/2)

2012(Formula)

161cm 166cm 170.7cm 175.7cm
HPX Brace  ( 7.1/2-8.1/4)  ( 7.3/4-8.1/2)  ( 8.1/2-9)   ( 8.1/2-9)
RX   Brace  ( 8.1/4-9)  ( 8.1/2-9.1/4)  ( 8.3/4-9.1/2)  ( 8.3/4-9.1/2)
2013   151cm 156cm 161cm   166cm 171cm   176cm
GPX Brace ( 8-8.1/2) ( 8-8.3/4) ( 8.1/4-9) ( 8.1/2-9.1/4) ( 8.3/4-9.1/2)
HPX Brace  ( 7.1/2-8.1/4)  ( 7.3/4-8.1/2)  ( 8.1/2-9) ( 8.1/2-9)
RX   Brace  ( 8.1/4-9) ( 8.1/2-9.1/4)  ( 8.3/4-9.1/2)  ( 8.3/4-9.1/2)
2014 145.5cm 150.5cm 155.5cm 160.5cm 165.7cm 170.8cm 175.9cm
GP・RX Brace (7.5-8.0) (8.0-8.5) (8.0-8.75) (8.25-8.75) (8.5-9.0) (8.75-9.5) (8.75-9.5)
HPX Brace (7.25-8.0) (7.5-8.0) (7.75-8.25) (8.0-8.75) (8.0-9.0)

※ ハンドルライザーとリムの組み合わせにより、同じボウレングスでも推奨ブレースハイトおよび指定ストリング長が微妙に異なるところもあります。

 2014からストリング長の表記がセンチからインチに変わり、これを換算したため端数表現になっていますが、以前のセンチ表記もこれを四捨五入したもののようです。


Win&Win 推奨ブレースハイト

  Long limbs (70'')
Medium limbs (68'')
Short limbs (66'')
Inno Carbon (27''), Inno CXT, TF Apecs, ProAccent, Winex, Winact (25'')  22,5 - 24,5cm 21,5 - 24,5cm  20,5 - 23cm
Inno Carbon, ProAccent, Winact (23'') 21,5 - 23,5cm
20,5 - 23cm
20 - 22,5cm

KAYA 推奨ブレースハイト

Riser Length Short Limbs
Medium Limbs
Long Limbs

25" Riser

 

20.5-22cm

8 1/4-9”

21-22.8cm

8 1/2 - 9 1/4"

 22-24cm

8 3/4 - 9 1/2"


Border 推奨ブレースハイト

Bow lengths 64 66 68 70

HEX5 series string length

Brace height

61

7.3 to 8.0

63

7.5 to 8.3

65

7.8 to 8.5

67

8.0 to 8.8

HEX6 series String length

Brace height

62

6.9 to 7.7

64

7.2 to 8.0

66

7.4 to 8.2

68

7.6 to 8.5


Samick 推奨ブレースハイト

  Short Limbs Medium Limbs Long Limbs
 Brace height 7" 7/8 - 8" 6/7 8" 1/4 - 9" 8" 2/3 - 9" 4/9

ストリングの長さの選択

 現行のテイクダウンリカーブボウで、ハンドルとリムを結合する標準的な方式となっているHDSシステムでは、HoytのほかWin&Win、Samick、FIVICS、KAYA、MKなど、さまざまなメーカーのハンドルライザーとリムを組み合わせることができます。すべてのメーカーの製品がHoytと同じ規格のデザインであれば、Hoytがボウレングスごとに指定しているストリングと同じ長さを選択すれば良いはずですが、実際にはその組み合わせによって違いがでてきます。とくにメーカーにより、リムのリカーブデザインが違うため、適正なブレースハイトに設定するには、異なる長さのストリングが必要になってきます。国内大手のアーチェリープロショップのひとつであるSHIBUYAが供給するストリングでは、20~30回転ツイスト済みの状態で、64インチ用として153.0㎝、153.7㎝、154.3㎝の3種類、66インチ用として158.1㎝、158.8㎝、159.4㎝、160.0㎝の4種類、68インチ用として162.6㎝、163.2㎝、163.8㎝、164.5㎝、165.1㎝の5種類、70インチ用として168.3㎝、168.9㎝、169.5㎝の3種類を用意して、さまざまな組み合わせに対応させようとしています。微妙な長さの調整については、ストリングツイストの増減により適正なブレースハイトに合わせることになりますが、そのツイスト回転数が多すぎても少なすぎても、ストリングの特性や性能を殺してしまうことになります。ちなみに、66インチ用としてHoyt社のチャート表では160cm(Formulaでは161cm)が指定されていますが、SHIBUYAでは158.1cm(同160.0cm)の異なる長さを指定していて、実際に確かめてみると、SHIBUYAの設定が適正なブレースハイトになり、こちらのほうが正しいようです。Hoytのユーザーマニュアルのストリング長の記載が、最近はインチ表記に変わっていますが、これをセンチ換算するだけで以前のものと0.5㎝程度の誤差があるわけで、Hoytがマニュアルに記載しているのは、おおよその目安を示しているだけかもしれません。いずれにせよ、市販されている数多くの完成ストリング製品では、ハンドルライザーとリムのさまざまな組み合わせに伴うストリングの長さの違いを配慮しているものは少なく、適正なブレースハイトに設定できていない原因になっていると考えられます。


実際のストリングセッティング

 リムボルトの締め具合や、ティラー調整により多少の誤差はあると思いますが、ハンドルライザーにもリムにもメーカー毎に物理的に固有の長さがあるはずです。この古ぼけたHOYT純正のストリングは、10年以上前のモデルHoyt FXリムに付属していたものです。FXリムは、通常タイプのリムよりも1/2インチ低いブレースハイトが指定されていて、ストリングも約1cm長いものを使用するようマニュアルには記載されていました。通常タイプのリムでは、160cmのストリングが指定されていたので、プラス1cmなら約161cmになるはずですが、実測すると159cmしかありません。これを、当時のスタンダードなハンドルライザーのMatrixと組み合わせると、ノンツイストでブレースハイトが7+3/4インチになり、たしかにマニュアルで指定しているように、標準より約1/2インチ低いブレースハイトになります。  ストリング長を具体的に明示しているメーカーは少なく、ブレースハイトのみを指定しているメーカーがほとんどですが、これほど長さが異なるのであれば、中途半端なストリング長の指定は、ありがた迷惑な情報です。GMX25"ハンドル+CX900shortリムの66インチの組み合わせでは、SHIBUYAでCode18と呼んでいる158.1cmのストリングで、8+1/4インチ前後のブレースハイトになります。SAMICK、MK製のリムを使う場合は158.8cmまたは159.4cmを、160.0cmはFormulaとGPX用としているようです。一方、HoytのFormula RX25"ハンドル+F3Shortリムの66インチの組み合わせに、実測で161cmのストリングをノンツイストでセットすると、ブレースハイトは7+7/8インチにしかなりませんが、30~40回転の範囲でツイストすると、やっと推奨ブレースハイト下限の8+1/4前後になり、この結果から見ると、経験に裏付けされたSHIBUYAのストリングの長さ表記がもっとも正確なようです。